漢方治療を脳外科疾患で苦しむ患者さんのために

片山常任理事挨拶

片山常任理事挨拶

特に漢方については、まず漢方の有効性を実感することが大切だと思う。
本会の活動を通じて、「自分も漢方を使ってみよう」という脳神経外科医が
一人でも多くなることを願ってやまない。
日本脳神経外科漢方医学会 常任理事 片山容一
img_katayama.jpg脳神経外科領域おける漢方を考えるために、1996年に「脳外科と漢方」研究会が発足した。
黎明期には、東邦大学脳神経外科の上田守三教授、昭和大学脳神経外科の藤本 司教授らと共に私も会長を務めたが、当時の学術集会参加者は50名にも満たない会であった。

2001年には、日本医科大学脳神経外科の高橋 弘教授を会長として第10回学術集会が開催されたが、それを機会に、この研究会は「日本脳神経外科漢方医学会」に改組された。

その後、2008年には筑波大学脳神経外科の松村 明教授が会長となり、日本脳神経外科学会の3点クレジット(履修単位)学会としての登録申請が行われた。翌2009年、生涯教育クレジット3点対象学会として認められると第18回から参加者数は100名以上となり、2011年の東京医科歯科大学脳神経外科の大野喜久郎教授の第20回以降、参加者数は毎年200名を超え、会員も400名以上の学会に発展した。2014年開催の日本脳神経外科学会総会では、日本大学脳神経外科の吉野篤緒教授が取り纏め役となって、日本脳神経外科漢方医学会EBM委員会が執筆・監修したテキスト『EBMによる日本脳神経外科領域の漢方の使い方』が配布された。
隔世の感とはこのことであり、本会の発足に関わった一人として、我田引水ながら喜びに堪えない。


言うまでもなく、脳神経外科医の責任は確実な手術を行うことによって全うされるものであり、一般的には、脳神経外科医は手術を必要としない治療にはあまり熱意がなく、漢方となるとなおさら関心を持たない傾向がある。これは日本と同じように伝統的なHerbal Medicineが普及している韓国や中国、台湾の脳神経外科医も同様である。ただ我が国の脳神経外科医には少し異なるところがある。日本の脳神経外科医は、脳神経外科が対象とする疾患である限り、手術ばかりではなくあらゆる種類の治療をも取り入れようとする。すなわち、我が国の脳神経外科医は、外国の脳神経外科医と違って、手術をやりっぱなしにはしないことが多い。やりっぱなしにしないというのは、手術をした後も、その患者の治療を続けるという意味である。そしてそれは、診療の効率を悪くするという短所もあるが、手作りの深みが出て来るという長所もある。そのような工夫を行うことにより、患者の方も、手術を受けた脳神経外科医を頼りにする。
そんな臨床の現場では、漢方も重要な治療の手段になるのはもちろんである。そこでは、脳神経外科医が漢方を駆使して治療にあたるということが起きても、なんら不思議ではない。


本会の当初の目的は、手術で残存する後遺症に対して、西洋薬ではすでに限界があるので、漢方薬を使ってみようという勉強会のようなものだったが、演題数の増加とともに、慢性硬膜下血腫、頭痛、三叉神経痛、認知症、嚥下障害、脳卒中などと、漢方薬の治療対象になる症候に広がりがみられるようになった。
それら脳神経外科が対象とする症候には、漢方薬が驚くほど奏効することがある。効果のある治療なら、なんでも利用しようとする姿勢さえあれば、そのことに気付くのにそれほどの時間はかからない筈である。

手作りの医療があまり許されなくなり、EBMが重視される時代になってはいるが、本当は、それぞれの医師の経験がEBMよりはるかに重要だと思っている人も少なくないのではないだろうか。
特に漢方については、まず漢方の有効性を実感することが大切だと思う。本会の活動を通じて、「自分も漢方を使ってみよう」という脳神経外科医が一人でも多くなることを願ってやまない。


2015年4月
日本脳神経外科漢方医学会常任理事
日本大学病院院長 片山 容一